深夜でも人の波が途切れない「不夜城」、東京・六本木。
六本木ヒルズや東京ミッドタウンなどの大規模商業施設のほか、多くの飲食店が軒を連ねる国内最大級の繁華街で昨年9月、何の落ち度もない男性が突然、覆面姿の男らに襲撃され、殺害された。
警視庁麻布署捜査本部の捜査で浮上したのは、暴走族「関東連合」(解散)のOBを中心とする犯行グループ。
今年1月にグループの18人が逮捕されたが、主犯格の見立真一容疑者(33)は、事件後に海外に逃亡したままだ。
卑劣で残虐な犯行は約300人の客の前で実行された。
昨年9月2日午前3時40分ごろ、六本木のクラブ「フラワー」(閉店)に、覆面姿の男ら9人が侵入。
奥のVIP席に座っていた飲食店経営、藤本亮介さん=当時(31)=の頭上に金属バットなどを何度も振り下ろした。
「最初は仮装イベントかと思いました。でも、キンキンって金属バットで殴る音が聞こえてきて…。
男らが立ち去った後には、血まみれの男性がぐったりして座っていました」
店内にいた20代の女性客は当時の様子をこう振り返り、肩を震わせた。
男らの犯行はわずか数分間。
周囲にいた従業員や客らも何が起こったのか分からず、男らが立ち去った後も、しばらく呆然(ぼうぜん)としていたという。
藤本さんは頭や顔面を集中的に殴られており、搬送先の病院で死亡が確認された。
店内には大音量の音楽が流れ、照明が薄暗かったにもかかわらず、藤本さんの座る席に迷わずに向かっていることから、捜査本部は当初、怨恨(えんこん)による犯行とみて捜査。
事前に藤本さんが来店することを把握していた上での計画的犯行とみていた。
しかし、藤本さんの周辺で目立ったトラブルは見当たらず、浮上したのは六本木周辺を中心に活動するいわゆる「半グレ集団」の存在だった。
捜査本部が着目したのは、金属バットで集団暴行するという手口。
これは関東連合がよく使う襲撃方法だった。
また、現場周辺の防犯カメラに映った犯行グループの画像を公開したところ、「関東連合の関係者によく似ている」という情報ももたらされた。
グループが逃走に使った2台の車のうち1台も、関東連合関係者が役員を務める都内の会社名義であることも割り出した。
捜査関係者によると、関東連合は平成15年に解散したが、OBは同世代を中心に強い結びつきを維持している。
近年は六本木周辺のトラブルにたびたび顔を出し、22年には元横綱朝青龍にOBが殴られる事件があったほか、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが暴行された事件では別のOBの男が実刑判決を受けた。
捜査本部は防犯カメラの解析や関係者の証言などから、今回の事件に関与した関東連合OBらのグループを特定したが、うち7人は事件直後に中国やハワイなど海外に逃亡していた。
その中に、グループを統率していた関東連合元リーダーの見立容疑者も含まれていた。
捜査本部は今年1月、見立容疑者を除く海外逃亡組が帰国したのに合わせ、凶器準備集合容疑で、見立容疑者の2つ後輩の元リーダー、石元太一被告(31)ら18人を逮捕。
さらに、石元被告ら9人が殺人容疑で再逮捕されたが、東京地検は今月21日、殺意の認定が困難と判断し、傷害致死罪などで起訴した。
捜査関係者によると、ただ一人、逃亡を続けている見立容疑者は昨年11月2日にフィリピンに入国したことが確認されており、現在も同国に潜伏している疑いが強い。
捜査本部は今月21日、殺人容疑などで、見立容疑者の公開手配に踏み切った。
見立容疑者は関東連合の現役時代、対立するグループや後輩などを徹底的に暴行することなどから、「残虐王子」と呼ばれていた。
逮捕されたOBの一部は「襲撃に参加したくなかったが、見立(容疑者)には面と向かって逆らえない」と話しているという。
関東連合OBらを知る関係者によると、見立容疑者は仕事をせず、後輩らからカネを徴収して生活しているという。
ただ、後輩が関係者の仲介で警視庁に出頭するなどした一方、見立容疑者は仲介者の言葉に耳を貸さなかったようだ。
捜査関係者によると、逮捕された数人は「(藤本さんは)人違いだった」と供述しているという。
見立容疑者は数年前から対立グループの男性を襲撃する機会をうかがっており、捜査本部は男性と身体的特徴が似ていた藤本さんが誤って襲撃されたとみている。
事件前には、石元被告が現場のクラブ関係者に「丸刈りで足を引きずる男が来たら連絡してほしい」と伝えており、藤本さんが来店したのを目撃した関係者が「似た特徴の男がいる」と、石元被告に連絡。
石元被告が見立容疑者にこの情報を伝え、犯行グループが集められたとみられる。
関東連合が人違いで人命を奪ったのは、今回が初めてではない。
平成12年5月、大田区のボウリング場で、すし店員の少年を対立する不良グループと勘違いして集団で暴行。
少年は病院に搬送されたが死亡した。石元被告はこの事件にも関与していたという。
捜査関係者は「相手の名前や顔も確認もせずに襲撃し、人違いで殺人を繰り返す、どうしようもないやつらだ。
理由も分からずに殺害された被害者のことを思うと、理不尽極まりない。
見立容疑者に逃げ得は許さない」と力を込める。
捜査本部は見立容疑者の顔写真入りのポスター1万2000枚を作成して情報提供を求めるとともに、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配に向けた手続きも進めている。
見立容疑者の身長は168センチ。
情報提供は警視庁麻布署捜査本部(電)03・3479・0110へ。
MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130224/crm13022418010011-n1.htm
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