「近いうちに、メンバーをまとめて出頭させる」
正月気分がまだ抜けきらない今月上旬、六本木襲撃事件を捜査する警視庁麻布署捜査本部に、暴走族「関東連合」(解散)の関係者からこんな連絡が入った。
言葉通りに10日、凶器準備集合容疑で逮捕状が出ていた男5人が、逃亡先の韓国から同じ便で羽田空港に到着。
元リーダーの石元太一容疑者(31)ら国内にいた3人とともに、8人が逮捕された。
翌11日には、さらに国内の7人が出頭し、逮捕者は計15人に。
捜査幹部は「出頭の決断まで横並びとは。間違った絆と結束力だ」とあきれる。
ただ、グループを統率していた主犯格の見立(みたて)真一容疑者(33)は、いまだにフィリピンに潜伏しているとされ、ほかの2人も行方をくらませたままだ。
「いくつかある関東連合のOBグループで最も過激なのが見立容疑者のグループだったが、これでカリスマ性も失われるだろう」
捜査関係者はこう語る。
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見立容疑者は石元容疑者の3学年上のリーダーで、集団で抗争相手を金属バットで襲う手口を確立。
後輩にも、ことあるごとにヤキ(制裁)を入れて恐怖心を植え付け、グループを束ねてきた。
石元容疑者は著書『不良録』の中で、現役時代の心理状態を「集団心理と同調圧力」「警察に捕まったときに、初めてゆっくり眠れた。(中略)先輩からヤキを入れられることもない」などと表現している。
見立容疑者を中心とした“鉄”の上下関係を成人後も保ち続けたOBグループ。
関係者によると、今回逮捕されたメンバーの中には「絶対に捕まる」と襲撃への参加を渋った者もいたが、この時点では見立容疑者による「同調圧力」の呪縛から抜け出せなかった。
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捜査の焦点は今後、殺人容疑での立件に移るが、ハードルも高い。
凶器が刃物などに比べて殺傷能力が低い金属バットで、覆面をしたまま殴っているため、誰が致命傷を与えたかを特定するのが困難だからだ。
ただ、捜査関係者は「関東連合は、過去に何度も相手を金属バットで殴って死亡させている。
こうした事実を踏まえれば、『殺すつもりはなかった』では通らない」と力を込める。
襲撃事件のほかにも、石元容疑者らが関与する振り込め詐欺などの違法行為や暴力団員となった一部OBとのつながりなど、解明すべき「闇」は根深い。
警視庁は事件に絡み、六本木でクラブ経営などを手がけ、OBグループの礎を築いたとされる40代の大物OBからも事情を聴くなど、グループの資金源についても追及の手を緩めない。
暴走族からは足を洗い、暴力団でもないことから、事実上野放し状態だった関東連合は、襲撃事件で警察を本気にさせてしまった。
「今のOBグループが、10年後に存続していることはない。完全に悪事から足を洗うか、暴力団に吸収されるか。二つに一つだ」
警視庁幹部は断言した。
MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130112/crm13011222030020-n1.htm